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非正規雇用者の休業手当ルール:会社都合で働く場所が休みの時に

Tags: 休業手当, 非正規雇用, 会社都合, 権利, 労働基準法

会社都合で働く場所が急に休みになったり、シフトが大幅に削られたりしてしまい、収入面で不安を感じている非正規雇用の方もいらっしゃるかもしれません。このような場合、「休業手当」という形で会社から補償を受けられる可能性があります。非正規雇用者の方も、この休業手当の対象となる場合があります。

ここでは、会社都合で働くことができなくなった場合に知っておきたい、休業手当のルールについて解説します。

休業手当とは?

休業手当とは、労働基準法第26条に基づいて、会社の都合によって従業員を休業させた場合に、会社が従業員に支払わなければならない手当のことです。この手当は、雇用形態に関わらず、パートタイムやアルバイトといった非正規雇用の方も対象となり得ます。

会社には、従業員が労働契約に基づいて働く用意があるにもかかわらず、会社の都合で労働させることができない場合に、労働者を休業させる責任があります。この責任を補償するために、休業手当の支払い義務が定められています。

どのような場合に休業手当は支払われるのか?「会社都合」の範囲

休業手当が支払われるのは、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合です。これは一般的に「会社都合」と呼ばれます。具体的には、以下のような理由で働く場所が休業になったり、シフトがなくなった場合などが含まれます。

一方、地震や台風などの天災地変や、法律による施設の閉鎖命令など、会社側の努力をもってしても避けることができない「不可抗力」による休業の場合、休業手当の支払い義務は発生しないとされています。ただし、不可抗力であるかどうかの判断は、単に外部的な要因だけでなく、会社が休業を回避するために最大限の努力をしたかどうかも考慮されます。

「シフトがなくなった」という場合でも、それが単に仕事が少ないためなのか、会社の経営判断によるものなのかによって、休業手当の対象になるかどうかが変わってきます。ご自身の状況が「会社都合」に当たるかどうか判断が難しい場合は、後述の相談窓口に確認してみることをお勧めします。

休業手当はいくら支払われるのか?計算方法

休業手当として会社が支払うべき金額は、労働基準法第26条により「平均賃金の100分の60(6割)以上」と定められています。

「平均賃金」とは、原則として、休業が発生した日以前の3ヶ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(休日を含む)で割った1日あたりの賃金額です。

例えば、直近3ヶ月の総賃金が30万円で、その期間の総日数が90日だった場合、平均賃金は「30万円 ÷ 90日 = 約3,333円」となります。この場合の休業手当は、1日あたり「約3,333円 × 0.6 = 約2,000円」以上ということになります。

ただし、給与が時給や日給で計算され、出勤した日数や時間が少ない場合など、計算方法には例外や特例もあります。また、会社によっては労働基準法で定められた6割を上回る手当を支払う場合もありますので、就業規則などで確認することが重要です。

非正規雇用者でも対象となる?

はい、繰り返しになりますが、休業手当は、労働基準法が適用される全ての労働者が対象です。正社員だけでなく、パートタイムやアルバイト、契約社員といった非正規雇用の方も対象となり得ます。重要なのは、労働者として会社と雇用契約を結んでいるかどうか、そして休業が「会社都合」であるかどうかです。

ただし、労働契約上、働く場所から働く場所から働くことを義務付けられていない日(もともとシフトに入っていない日など)については、休業手当の対象とはなりません。あくまで、「働く意思と能力があり、契約上働くことになっていた、または働くことができたはずの日」について、会社都合で働けなくなった場合に休業手当の支払い対象となり得ます。

休業手当が支払われない、金額が少ないと感じたら?

もし、会社都合での休業にもかかわらず休業手当が支払われなかったり、計算されるべき金額よりも明らかに少ないと感じたりした場合は、以下の手順で対応を検討してみてください。

  1. 会社の担当部署に確認する: まずは、会社の担当者(人事部や経理部など)に、休業手当の支払いについて確認してみましょう。計算方法や対象となる条件について、説明を求めることができます。
  2. 就業規則や労働契約書を確認する: 会社の休業に関する規定や、ご自身の労働条件がどのように定められているかを確認します。
  3. 証拠を集める: 休業を指示された日時や内容、会社の休業理由、ご自身のシフト状況などが分かる記録(メール、メッセージ、シフト表など)を可能な範囲で保管しておきましょう。
  4. 公的な相談窓口に相談する: 会社との話し合いで解決しない場合や、どのように対応すれば良いか分からない場合は、以下の窓口に相談することができます。
    • 労働基準監督署: 労働基準法に違反する行為について、相談や指導、是正勧告などを行う機関です。会社の所在地を管轄する労働基準監督署に相談できます。
    • 総合労働相談コーナー: 厚生労働省が設置している相談窓口で、労働問題全般について無料で相談できます。面談や電話での相談が可能です。
    • 弁護士や社会保険労務士: 専門家による有料の相談も選択肢の一つです。

ご自身の状況を正確に伝え、どのような権利があるのか、会社にどのように請求すべきか、具体的なアドバイスを受けることができます。

まとめ

会社都合による休業は、非正規雇用の方の生活に大きな影響を与えかねません。しかし、労働基準法によって、このような場合に労働者を保護するための休業手当の制度が定められています。

ご自身が働く場所の休業が「会社都合」にあたるか、そして休業手当の対象となるかを確認し、もし適切な対応がされていないと感じた場合は、諦めずに会社に確認したり、公的な相談窓口を利用したりすることが重要です。

自身の労働条件や権利について正しく理解し、必要に応じて適切な行動を取ることで、不安の軽減や問題の解決に繋がるでしょう。このサイトでは、他にも非正規雇用の方が知っておくべき様々な労働者の権利や法律情報を提供しています。ぜひ他の記事も参照し、ご自身の働く環境をより良くするための知識を得てください。