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非正規雇用の残業代ルール:正しく計算されているか確認する方法

Tags: 非正規雇用, 残業代, 労働時間, 割増賃金, 労働基準法

非正規雇用でも残業代は発生します

「パートやアルバイトだから残業代は出ない」と思っていませんか。実は、非正規雇用の方も、法律で定められた労働時間の上限を超えて働いた場合には、残業代を受け取る権利があります。労働基準法は、原則として雇用形態に関わらずすべての労働者に適用される基本的なルールです。

この記事では、非正規雇用の方々が知っておくべき残業代の基本的な考え方、発生する条件、そしてご自身の給与が法律に則って正しく計算されているかを確認する方法について解説します。

残業代が発生する基本的な条件

残業代、正式には割増賃金と呼ばれる賃金は、主に以下の二つのケースで発生します。

  1. 法定労働時間を超えて働いた場合 労働基準法では、1日の労働時間を8時間、1週間の労働時間を40時間までと定めています。これを「法定労働時間」といいます。この法定労働時間を超えて働いた時間は「時間外労働」となり、原則として通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金が支払われます。 例えば、1日の契約時間が6時間であっても、その日に9時間働いた場合、法定労働時間である8時間を超えた1時間分は時間外労働として割増賃金の対象となります。

  2. 法定休日や深夜に働いた場合

    • 法定休日労働: 法定休日に労働させた場合、通常の賃金の1.35倍以上の割増賃金が支払われます。法定休日とは、週に1日または4週間に4日与えなければならない休日のことを指します。
    • 深夜労働: 午後10時から午前5時までの間に労働させた場合、通常の賃金の1.25倍以上の割増賃金が支払われます。

これらの割増率は重複して適用される場合があります。例えば、法定労働時間を超えてかつ深夜に働いた場合は、時間外労働の割増率(1.25倍)と深夜労働の割増率(1.25倍)が加算され、通常の賃金の1.5倍(1.25 + 0.25)以上となります。また、法定休日に深夜労働をさせた場合は、法定休日労働の割増率(1.35倍)と深夜労働の割増率(1.25倍)が加算され、通常の賃金の1.6倍(1.35 + 0.25)以上となります。

36協定(サブロク協定)とは

使用者が労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、法定休日に労働させたりするためには、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と書面による協定を結び、これを労働基準監督署長に届け出る必要があります。この協定が「時間外労働・休日労働に関する協定届」、通称「36協定」です。

36協定が締結・届出されていない事業場で、労働者が法定労働時間を超えて働いた場合、その労働は労働基準法違反となります。もちろん、労働者が働いた分の賃金(割増賃金を含む)は支払われるべきです。

ご自身の残業代が正しく計算されているか確認する方法

まずは、受け取った給与明細を確認しましょう。給与明細には、基本給だけでなく、時間外労働手当や休日労働手当、深夜労働手当などの項目があるか、それぞれの項目に記載された時間数や金額が適切かを確認します。

確認のために以下の情報が必要です。

これらの情報をもとに、以下の点をチェックします。

  1. 実労働時間と給与明細の労働時間: 給与明細に記載されている労働時間や残業時間と、実際の勤務記録が一致しているかを確認します。サービス残業など、働いた時間が正しく記録されていない、あるいは賃金が支払われていない場合は、まずは正確な勤務時間の記録を作成することが重要です。
  2. 割増率の適用: 法定労働時間を超えた時間、法定休日に働いた時間、深夜に働いた時間に対して、法律で定められた割増率(1.25倍、1.35倍、1.5倍、1.6倍など)が適用されているかを確認します。例えば、時給1000円の方が法定時間外残業を1時間した場合、その分の賃金は1000円 × 1.25 = 1250円となります。給与明細の時間外手当がこの計算に基づいているか確認します。
  3. 計算方法: 実際に残業時間分の賃金を計算し、給与明細の記載と比べてみましょう。

    • (例)時給1000円の方が、法定労働時間(週40時間、1日8時間)を超えて、ある日に9時間働いた場合
      • 法定時間外労働時間:1時間(9時間 - 8時間)
      • この日の残業代:1000円 × 1.25(割増率)× 1時間 = 1250円
      • この計算が給与明細の時間外手当に反映されているか確認します。

不明な点や疑問点があれば、給与計算担当者や責任者に確認を求めることも一つの方法です。

サービス残業について

働いた分の賃金が支払われない「サービス残業」は違法です。もしサービス残業を強いられている場合は、正確な勤務時間の記録を日々つけることが大切です。記録は、後日会社と話し合いをする際や、外部機関に相談する際に重要な証拠となります。

もし正しく支払われていないと思ったら

ご自身の残業代が正しく計算されていない、あるいはサービス残業を強いられていると感じる場合は、一人で抱え込まず、信頼できるところに相談することをおすすめします。

これらの窓口は、無料で相談できる場合もありますので、まずは情報収集から始めてみるのが良いでしょう。

まとめ

非正規雇用であっても、法定労働時間を超えて働いた場合などには残業代が支払われるのが法律上の原則です。ご自身の労働条件通知書や給与明細を確認し、タイムカードなどで日々の労働時間を正確に記録することで、正しく賃金が支払われているかご自身でチェックすることができます。もし疑問や不安があれば、一人で悩まず、専門機関に相談することを検討してください。ご自身の労働に関する権利を知り、行動することが大切です。