非正規雇用者の退職金・賞与:知っておきたいルールと正社員との違い
非正規雇用で働く皆様にとって、正社員との待遇の違い、特に退職金や賞与(ボーナス)が支給されるのかどうかは、大きな関心事の一つかと思います。ここでは、非正規雇用者の退職金や賞与に関する基本的な考え方と、知っておくべきルールについてご説明します。
非正規雇用者に退職金・賞与は原則支給されるのか
結論から申し上げますと、法律上、すべての労働者に退職金や賞与の支給を義務付ける規定はありません。したがって、非正規雇用であるパートタイマーやアルバイト、契約社員の方に、退職金や賞与が当然に支給されるとは限りません。
退職金や賞与は、あくまで企業の就業規則や労働協約、個別の労働契約において定めがある場合に、その定めに従って支給されるものです。多くの企業では、退職金や賞与の支給対象を正社員に限定しているケースが多いのが現状です。
例外的に非正規雇用者にも支給されるケース
原則として法律上の義務はありませんが、以下のようないくつかのケースでは、非正規雇用者にも退職金や賞与が支給される可能性があります。
- 労働契約書や就業規則に支給に関する定めがある場合: 個別の労働契約書や、会社の就業規則、賃金規程などに、非正規雇用者に対する退職金や賞与の支給条件が明記されている場合は、その定めに従って請求することができます。
- 慣行として支給されている場合: 長年にわたり、特定の条件を満たす非正規雇用者に対して退職金や賞与が継続的に支給されてきたという慣行がある場合も、支給を求める根拠となることがあります。
- 同一労働同一賃金の原則に基づく場合: 後述する「同一労働同一賃金」の考え方に基づき、正社員との間で不合理な待遇差が禁止される場合です。
同一労働同一賃金と退職金・賞与
「同一労働同一賃金」とは、同じ仕事(同一の労働)をしているのであれば、雇用形態(正規雇用、非正規雇用など)にかかわらず、同じ賃金(同一の賃金)を支払うべきである、という考え方に基づき、不合理な待遇差を解消しようとする取り組みです。
労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法などにおいて、正社員と非正規雇用者との間で、職務内容や配置の変更の範囲などが同じであるにもかかわらず、賃金や賞与、退職金、その他の待遇について不合理な差を設けることが禁止されています。
退職金や賞与についても、この「不合理な待遇差の禁止」の対象となります。例えば、正社員と非正規雇用者で、仕事内容や責任の度合い、異動・転勤の範囲などが全く同じか、それに近いにもかかわらず、退職金や賞与の有無や額に大きな差がある場合、それが不合理な待遇差として違法となる可能性があります。
ただし、待遇差が不合理かどうかは、様々な要素(職務内容、責任の程度、配置転換の有無・範囲など)を総合的に考慮して判断されます。必ずしも「非正規であれば正社員と同額の退職金・賞与がもらえる」ということではなく、仕事内容や貢献度に応じた説明可能な差は認められる場合があります。
自分の勤務先のルールを確認する方法
ご自身の勤務先で退職金や賞与が非正規雇用者にも支給される可能性があるかを確認するには、以下の書類を確認することが重要です。
- 労働条件通知書: 雇用契約を結ぶ際に交付される書類です。給与だけでなく、賞与や退職金に関する規定の有無が記載されている場合があります。
- 就業規則、賃金規程、退職金規程: これらの規程には、労働条件や賃金、退職金に関する詳細なルールが定められています。企業のデスク周りや社内ネットワークで確認できるか、総務部などに問い合わせてみましょう。
これらの書類に目を通し、ご自身の雇用形態における退職金や賞与の取り扱いがどのように定められているかを確認してください。
待遇差に疑問がある場合の対応
もし、ご自身の仕事内容や責任が正社員とほとんど変わらないにもかかわらず、退職金や賞与について著しい差があると感じる場合は、それが不合理な待遇差にあたる可能性があります。
まずは、勤務先の担当部署(人事部や総務部など)に、退職金や賞与に関する規程について確認し、なぜそのような待遇差があるのか説明を求めてみることが考えられます。
説明に納得できない場合や、会社が取り合ってくれない場合は、以下のような外部機関に相談することも検討できます。
- 労働組合: 企業の労働組合や、非正規雇用者も加入できる地域・産業別の労働組合に相談し、会社との交渉を依頼できます。
- 弁護士: 労働問題に詳しい弁護士に相談し、法的な観点からのアドバイスや対応を依頼できます。
- 労働基準監督署: 労働基準法に違反するようなケース(例: 労働条件通知書に虚偽の記載があるなど)について相談できますが、待遇差そのものに関する直接的な解決には限界がある場合もあります。
- 都道府県労働局: 労働局内に設置されている「総合労働相談コーナー」では、様々な労働問題に関する相談や、必要に応じたあっせん制度の利用が可能です。
まとめ
非正規雇用者に退職金や賞与が法律上当然に保障されているわけではありませんが、個別の契約内容、会社の規程、そして同一労働同一賃金の原則によって、支給されるケースや、不合理な待遇差の是正を求められるケースがあります。
ご自身の労働条件通知書や会社の就業規則などを確認し、退職金や賞与に関する定めをしっかりと把握することが第一歩です。もし待遇に疑問や不合理だと感じる点があれば、一人で悩まず、会社の担当部署や信頼できる外部機関に相談し、適切な対応を検討していくことが大切です。ご自身の労働条件について正しく理解し、安心して働くための一助となれば幸いです。