非正規雇用でも慶弔休暇・特別休暇は取れる?ルールと条件を解説
導入:非正規雇用者と慶弔休暇・特別休暇
パートやアルバイト、契約社員といった非正規雇用で働く方々の中には、家族に不幸があった場合や結婚する際に、会社を休めるのか、そしてその際に給与は支払われるのかといった疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。年次有給休暇については比較的知られていますが、慶弔休暇やその他の特別休暇については、正社員だけのものではないかと考えている方も少なくありません。
本記事では、非正規雇用者の方が慶弔休暇や特別休暇を取得できるのか、どのような条件があるのか、そしてご自身の状況を確認するために何をすべきかについて詳しく解説します。
慶弔休暇・特別休暇とは何か
まず、慶弔休暇や特別休暇がどのようなものかをご説明します。
- 慶弔休暇: 従業員の慶事(結婚など)や弔事(家族の不幸など)に際して取得できる休暇です。
- 特別休暇: 慶弔休暇以外に、会社が独自に定める特定の目的のために取得できる休暇の総称です(例:リフレッシュ休暇、裁判員休暇など)。
これらの休暇は、年次有給休暇のように労働基準法で定められた休暇とは異なり、法律上の義務ではありません。つまり、会社が任意で設けることができる休暇制度です。
非正規雇用者は慶弔休暇・特別休暇を取得できるのか
慶弔休暇や特別休暇が法律上の義務ではないということは、会社に制度がなければ、正社員であっても非正規雇用者であっても取得することはできません。
しかし、多くの会社では福利厚生の一環としてこれらの休暇制度を設けています。会社に制度がある場合、非正規雇用者の方でも取得できるかどうかは、会社のルール(就業規則など)によって定められます。
重要なのは以下の点です。
- 会社の就業規則や労働契約に定めがあるか: 慶弔休暇や特別休暇の制度があるかどうか、そしてその対象者に非正規雇用者が含まれるかどうかが明記されているかを確認する必要があります。
- 正社員との間の不合理な待遇差の禁止: 2020年4月1日に施行された改正パートタイム・有期雇用労働法(大企業は2020年4月1日、中小企業は2021年4月1日から適用)により、「同一労働同一賃金」の原則が強化されました。これにより、非正規雇用者と正社員との間で、業務内容や責任の程度などに差がないにも関わらず、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。慶弔休暇や特別休暇といった福利厚生についても、不合理な差は許されないとされています。
したがって、会社の就業規則に慶弔休暇や特別休暇の定めがあり、正社員には付与されているのに、同じように働く非正規雇用者には一切付与されないという場合は、不合理な待遇差として問題となる可能性があります。ただし、休暇の日数や取得条件などについて、一定の範囲で違いが設けられている場合もあります。
取得できる場合の具体的な条件と手続き
会社の就業規則などで慶弔休暇や特別休暇の対象となっている場合、具体的な取得条件や日数は以下の点によって異なります。
- 取得できる事由: 結婚、配偶者の出産、親族の死亡(父母、配偶者、子、兄弟姉妹、祖父母、孫など、会社によって対象範囲が異なります)、子の結婚など。
- 取得できる日数: 事由ごとに日数が定められています(例:本人の結婚で5日間、父母の死亡で7日間など)。
- 勤続期間の要件: 会社によっては、一定期間(例:6ヶ月以上)継続勤務していることを取得条件としている場合があります。
- 申請手続き: 会社所定の申請書提出など、定められた手続きが必要です。慶弔事由を証明する書類(結婚証明書、会葬礼状など)の提出を求められる場合もあります。
これらの詳細は全て会社の就業規則に記載されています。
休暇中の賃金はどうなるのか
慶弔休暇や特別休暇を取得した日の賃金が支払われるかどうかは、これも会社の就業規則によって定められます。
年次有給休暇の場合は、原則として賃金が支払われますが、慶弔休暇や特別休暇は法律で定められた休暇ではないため、原則として無給となります。しかし、会社によっては、福利厚生としてこれらの休暇を有給(給与が支払われる)としている場合もあります。
ご自身の会社の慶弔休暇・特別休暇が有給なのか無給なのかについても、就業規則を確認する必要があります。
ご自身の状況を確認するためにすべきこと
ご自身が慶弔休暇や特別休暇を取得できるかどうかを知るためには、以下の手順で確認を進めてください。
- 労働契約書を確認する: 雇用契約を結んだ際に交わした労働契約書に、慶弔休暇や特別休暇に関する記載がないか確認します。
- 会社の就業規則を確認する: 就業規則に、慶弔休暇や特別休暇の制度、対象者、取得条件、日数、有給か無給かなどが記載されています。就業規則は労働者に周知する義務がありますので、会社の規定を確認する方法(社内イントラネット、冊子、担当部署への問い合わせなど)を確認してください。
- 担当者(上司や人事担当部署)に問い合わせる: 就業規則を見ても不明な点がある場合や、就業規則の場所が分からない場合は、会社の担当者に直接確認するのが最も確実です。
もし取得を拒否されたら
会社の就業規則に慶弔休暇や特別休暇の制度があり、ご自身がその取得条件を満たしているにも関わらず、理由なく取得を拒否された場合は、以下の対応を検討できます。
- 会社の担当者と話し合う: まずは、なぜ取得できないのか理由を確認し、会社の規定に基づいて再度申請できるか話し合います。
- 労働組合に相談する: 会社の労働組合に加入している場合は、組合に相談して会社と交渉してもらうことができます。
- 労働基準監督署に相談する: 会社の就業規則に反して休暇が認められない場合や、正社員との間で不合理な待遇差があると思われる場合は、労働基準監督署に相談することができます。労働基準監督署は、労働基準法に基づき会社を指導する権限を持っています。
- 弁護士などの専門家に相談する: 個別具体的な状況について、より専門的なアドバイスが必要な場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。
まとめ:まずは就業規則を確認しましょう
非正規雇用者の方が慶弔休暇や特別休暇を取得できるかどうかは、法律ではなく会社の就業規則によって定められます。取得できる場合でも、その条件や休暇中の賃金支払いの有無は会社によって異なります。
したがって、ご自身がこれらの休暇を取得できるかを知るためには、まずはご自身の労働契約書や会社の就業規則を必ず確認することが重要です。もし就業規則が見当たらない場合や内容が不明な場合は、会社の担当者に遠慮なく問い合わせてみてください。
自身の労働条件や権利について正しく理解し、必要な情報を得ることは、安心して働く上で非常に大切です。