非正規雇用の社会保険加入基準:パート・アルバイトが知っておくべき条件
非正規雇用でも社会保険に加入できるのか
パートタイマーやアルバイトといった非正規雇用で働く方の中には、「自分は社会保険に入れるのだろうか」「加入すると何が変わるのだろうか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。社会保険は、病気や怪我、失業、老齢など、生活の中で起こりうる様々なリスクに備えるための重要な制度です。非正規雇用で働く方であっても、一定の条件を満たせば社会保険に加入することができます。
ここでは、非正規雇用の方が社会保険に加入するための条件について、分かりやすく解説いたします。自身の働き方と照らし合わせ、加入条件を満たしているか確認する参考にしてください。
社会保険の種類
一般的に「社会保険」と呼ばれるものには、主に以下の種類があります。
- 雇用保険: 失業した場合の失業給付や、育児休業給付、介護休業給付などが受けられます。
- 健康保険: 医療機関にかかった際の医療費の一部を負担してもらえるほか、病気や怪我で仕事を休んだ場合の傷病手当金などが受けられます。
- 厚生年金保険: 老齢になった際の年金(老齢厚生年金)や、障害を負った場合の障害年金、遺族への遺族年金などが受けられます。
これらの保険は、それぞれ加入条件が異なります。
雇用保険の加入条件
雇用保険は、原則として以下の両方の条件を満たす方が加入します。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
例えば、週に20時間以上のシフトに入っており、今後も1ヶ月以上働く見込みがある場合は、雇用保険の加入対象となります。ただし、昼間学生の方は原則として適用除外となります。
健康保険・厚生年金保険の加入条件
健康保険と厚生年金保険はセットで加入することが一般的です。これらの保険には、働き方によって主に二種類の加入パターンがあります。
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正社員と概ね同様の働き方の場合 正社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上働く方は、原則として健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。例えば、会社の所定労働時間が週40時間であれば週30時間以上働く方、所定労働日数が週5日であれば週4日以上働く方などが該当する可能性があります。
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短時間労働者の場合 上記の「4分の3基準」を満たさない、いわゆる短時間労働者の方でも、以下の全ての条件を満たす場合は、健康保険・厚生年金保険の加入対象となります。この条件は、企業の従業員規模によって段階的に拡大されていますが、現在(2024年10月時点)では、従業員数51人以上の企業で働く方が対象となることが多いです。また、従業員数が50人以下であっても、労使合意に基づき加入対象となっている事業所もあります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 所定内賃金が月額8.8万円以上であること(通勤手当や残業代などは含まれません)
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること(例えば、雇用契約書に「更新する場合がある」と記載されている場合など)
- 学生でないこと(夜間学生や定時制の課程の学生などは加入対象となる場合があります)
ご自身の勤務先の従業員規模や雇用契約の内容を確認し、これらの条件に該当するかどうかをご確認ください。
社会保険に加入するとどうなるのか
社会保険に加入すると、保険料が発生し、給与から天引きされることになります。これは手取り額が減ることを意味します。しかし、その一方で、様々な公的な保障を受けることができるようになります。
- 雇用保険: 失業した際に一定期間の失業給付を受けながら次の仕事を探すことができます。
- 健康保険: 医療費の自己負担割合が3割(70歳未満の場合)となり、病気や怪我で長期療養が必要になった場合には傷病手当金を受け取れる可能性があります。
- 厚生年金保険: 将来受け取る年金額が増え、老後の生活設計に役立ちます。また、万が一の障害や死亡の際にも年金が支給される可能性があります。
これらのメリットは、万が一の際に自分自身や家族の生活を守る上で非常に大きな支えとなります。
ご自身の状況を確認するために
ご自身の働き方が社会保険の加入条件を満たしているかどうかは、以下の方法で確認できます。
- 労働条件通知書または雇用契約書の確認: 自身の所定労働時間、所定労働日数、雇用期間の見込み、賃金額などが記載されています。
- 給与明細の確認: 社会保険料が控除されているか確認できます。
- 事業主(会社)への確認: 人事担当者などに直接、社会保険の加入状況や加入条件について問い合わせてみてください。
もし、ご自身が加入条件を満たしていると思われるにもかかわらず社会保険に加入できていない場合は、事業主の事務手続きが遅れている、あるいは誤っている可能性も考えられます。
不安や疑問がある場合の相談先
自身の社会保険の加入状況や、事業主の手続きに疑問や不安がある場合は、以下の公的機関に相談することができます。
- 雇用保険について: ハローワーク
- 健康保険・厚生年金保険について: 年金事務所、健康保険組合
これらの機関では、専門家が正確な情報を提供し、適切な対応について助言してくれます。
まとめ
非正規雇用であっても、働く時間や日数、賃金といった条件を満たせば、雇用保険、健康保険、厚生年金保険といった社会保険に加入する義務が生じます。社会保険への加入は、保険料の負担が発生するものの、将来の安心や万が一の保障に繋がる重要な制度です。
ご自身の労働条件を正しく理解し、社会保険に適切に加入できているか確認することは、自身の権利を守る上で非常に大切です。もし不明な点があれば、事業主に確認したり、公的な相談窓口を利用したりすることをお勧めします。