非正規雇用でも義務?パート・アルバイトのための健康診断解説
非正規雇用で働く皆様の中には、「パートやアルバイトでも健康診断は受けられるのだろうか」「費用は自己負担なのだろうか」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。正社員ではないから関係ない、と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、労働者の健康管理は、雇用形態にかかわらず非常に重要です。日本の法律では、一定の条件を満たす労働者に対して、事業者は健康診断を実施する義務を負っています。これは、非正規雇用者であるパートやアルバイトの方にも適用される可能性があります。
この記事では、非正規雇用で働く皆様が知っておくべき健康診断に関する基本的なルールと、ご自身の状況について確認すべきポイントについて解説します。
健康診断は法的な義務です
労働安全衛生法では、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を受けさせる義務があると定めています。これは、労働者が健康で安全に働くために非常に重要な規定です。
そして、この健康診断の実施義務は、正社員だけでなく、パートやアルバイトといった非正規雇用者にも適用されます。ただし、すべての非正規雇用者が対象となるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。
非正規雇用者が健康診断の対象となる条件
労働安全衛生法に基づく健康診断の対象となる「労働者」は、一般的に以下の条件を満たす方です。
- 期間の定めのない契約により使用される者
- 期間の定めのある契約により使用される者のうち、契約期間が1年以上であり、かつ、常時使用される者
パートやアルバイトの場合、上記の「期間の定めのある契約により使用される者」に該当することが多いでしょう。この場合、契約期間が1年以上であること、そして「常時使用される者」であることが条件となります。
「常時使用される者」とは、フルタイムの労働者と同様に、その事業場に常態的に勤務している者を指します。具体的には、1週間の所定労働時間数が、その事業場で同種の業務に従事する通常の労働者(例えば正社員)の4分の3以上である場合がこれに該当しますと考えられます。
したがって、パートやアルバイトの方でも、1年以上の契約が見込まれており、かつ週の労働時間が正社員の概ね4分の3以上であれば、法的に健康診断の対象となる可能性が高いと言えます。
ただし、週の労働時間が正社員の概ね2分の1以上4分の3未満の場合でも、健康診断の対象とするよう通達が出されているケースもあります。ご自身の正確な労働時間や雇用契約の内容を確認することが重要です。
事業者が実施すべき健康診断の種類
事業者が労働者に実施すべき健康診断にはいくつか種類がありますが、非正規雇用者に関係が深いのは主に以下の二つです。
- 雇入時の健康診断: 労働者を雇い入れる際に実施する健康診断です。これは、新たな労働者の健康状態を把握し、その後の適正配置や健康管理に役立てるために行われます。上記の対象条件を満たす非正規雇用者も、雇入れ時にこの健康診断を受ける必要があります。
- 定期健康診断: 1年以内ごとに1回、定期的に実施する健康診断です。常時使用する労働者に対して行われ、労働者の健康状態を経年で把握し、病気の早期発見や予防につなげる目的があります。上記の対象条件を満たす非正規雇用者も、定期健康診断の対象となります。
健康診断にかかる費用について
健康診断の実施にかかる費用は、原則として事業者が負担すべきものとされています。労働安全衛生法には、事業者が健康診断を実施する義務だけでなく、その実施に要する費用を負担することを通達等で明確にしています。
したがって、もしご自身が健康診断の対象となる条件を満たしているにも関わらず、事業者が費用負担を求めてきた場合は、その根拠を確認する必要があります。
ただし、労働者が個人的に希望して会社の指定する時期や場所以外で受診した場合など、例外的に労働者が費用を負担するケースもあり得ます。あくまで法的な義務として実施される健康診断の費用は、事業者の負担が原則です。
健康診断を受けない場合のリスク
事業者が法的に健康診断を実施する義務を怠った場合、法律違反となります。また、労働者が正当な理由なく健康診断の受診を拒否した場合、事業者は労働者に対して受診を促す義務があり、場合によっては就業規則に基づく処分(ただし、解雇などの重い処分は慎重な判断が必要です)の対象となる可能性もゼロではありません。
何よりも、健康診断はご自身の健康状態を確認し、将来の病気を予防したり早期に発見したりするための重要な機会です。自身の健康を守るためにも、対象となる場合は積極的に受診することをお勧めします。
疑問や不安がある場合の相談先
ご自身の雇用契約内容や労働時間から、健康診断の対象となるか分からない場合や、事業者が健康診断を実施してくれない、費用負担を求められたといった疑問や不安がある場合は、以下の相談先を利用できます。
- 会社の担当部署: 人事部や総務部などに確認してみましょう。
- 労働基準監督署: 労働安全衛生法に関する監督等を行っている行政機関です。法的な観点からのアドバイスを求めることができます。
- 労働組合: 労働組合に加入している場合は、組合に相談することも有効です。
まとめ
非正規雇用であるパートやアルバイトの方でも、一定の労働時間や契約期間の条件を満たす場合、労働安全衛生法に基づき健康診断の対象となります。健康診断の実施は事業者の義務であり、原則としてその費用も事業者が負担します。
ご自身の雇用条件を確認し、健康診断の対象となる場合は、ご自身の健康管理のために必ず受診してください。不明な点や問題がある場合は、ためらわずに会社の担当部署や労働基準監督署などの専門機関に相談することをお勧めします。ご自身の健康を守り、安心して働くために、正しい知識を持つことが大切です。