非正規働く人の権利ガイド

非正規雇用者が知っておくべき健康保険と年金:自分で加入?会社で加入?

Tags: 健康保険, 年金, 社会保険, 国民健康保険, 国民年金

非正規雇用で働く皆様にとって、健康保険と年金は生活を支える上で非常に重要な制度です。しかし、正社員とは異なる働き方であるがゆえに、「自分はどんな保険や年金に入る必要があるのか」「会社で加入できるのか、自分で手続きが必要なのか」といった疑問や不安を抱く方も少なくありません。

この制度は少し複雑に感じられるかもしれませんが、ご自身の状況に合わせて正しく理解し、適切な手続きを行うことは将来のためにも大切です。ここでは、非正規雇用で働く方が知っておくべき健康保険と年金に関する基本的なルールと、ご自身の加入状況を確認・検討するためのポイントを解説します。

健康保険について理解する

私たちが病気やケガをした際に、医療費の負担を軽減してくれるのが健康保険です。主に以下の3つのパターンがあります。

ご自身の働き方や状況によって、どの健康保険に加入するかが決まります。

会社の健康保険(社会保険)に加入する場合

非正規雇用であっても、一定の条件を満たせば会社の健康保険(多くの場合、全国健康保険協会けんぽや会社の健康保険組合)に加入することになります。これを社会保険の適用事業所に勤める「被保険者」と言います。

主な加入条件は以下の通りです(ただし、企業の規模などによって一部異なります)。

これらの条件を満たす場合、会社を通じて健康保険に加入し、保険料は会社と本人が折半して支払います。給与から天引きされるため、個別の納付手続きは不要です。

国民健康保険に加入する場合

会社の健康保険に加入しない場合は、原則としてお住まいの市区町村が運営する国民健康保険に加入する必要があります。これは、自営業の方やフリーター、パート・アルバイトで会社の健康保険の加入条件を満たさない方が加入する健康保険です。

国民健康保険の保険料は、前年の所得などに基づいて計算され、ご自身で市区町村に納付する必要があります。

家族の扶養に入る場合

ご自身の収入が一定額以下(原則として年間130万円未満、かつ被扶養者の年間収入の2分の1未満など、加入している健康保険組合によって基準が異なります)であり、主に親や配偶者といった家族の健康保険に「被扶養者」として加入できる場合があります。この場合、ご自身で健康保険料を支払う必要はありません。

しかし、パート・アルバイトで働く場合、収入が増えて扶養の範囲を超えると、ご自身で会社の健康保険に加入するか、国民健康保険に加入する必要があります。いわゆる「年収の壁」(例:106万円の壁、130万円の壁)として知られているのは、主にこの扶養から外れるかどうかの基準のことです。

年金について理解する

年金は、老後の生活費を保障するための重要な制度です。日本の公的年金制度は、すべての国民が加入する国民年金(1階部分)と、会社員や公務員などが加入する厚生年金(2階部分)の2階建て構造になっています。

厚生年金に加入する場合

会社の健康保険(社会保険)に加入する条件を満たす方は、同時に厚生年金にも加入することになります。保険料は会社と本人が折半し、給与から天引きされます。

厚生年金に加入すると、将来受け取れる年金額は国民年金のみの場合と比べて多くなります。

国民年金に加入する場合

厚生年金に加入しない方は、20歳から60歳になるまで国民年金に加入する必要があります。これは、国民年金保険料を自身で納付する「第1号被保険者」となる場合です。

国民年金保険料は定額で、日本年金機構から送付される納付書や口座振替などでご自身で納付します。納付が困難な場合には、学生納付特例制度や納付猶予制度などが利用できる場合があります。

また、家族(主に配偶者)が厚生年金に加入しており、ご自身の収入が一定額以下(原則として年間130万円未満など)であれば、「第3号被保険者」として国民年金に加入しているとみなされ、ご自身で保険料を納付する必要がない場合があります。

ご自身の状況を確認するポイント

まとめ

非正規雇用で働く方にとって、健康保険と年金は自身と家族の安心な生活を支えるための大切な制度です。ご自身の働き方や収入によって、加入すべき制度や手続きが異なります。まずはご自身の労働条件や収入状況を確認し、会社の担当者や公的機関にも相談しながら、適切な手続きを行ってください。自身の権利を知り、賢く制度を利用することが重要です。

ご不明な点やご不安な点があれば、一人で抱え込まず、職場の担当者や専門の相談窓口に問い合わせることをお勧めします。