非正規雇用者にも会社の就業規則は適用される?確認方法と注意点
非正規雇用者も会社の就業規則を知るべき理由
パートやアルバイトといった非正規雇用で働く方の中には、「正社員とは違うから、会社のルールブックである就業規則は自分には関係ない」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くの企業では、就業規則は正社員だけでなく、非正規雇用者を含む全ての労働者に適用されます。
就業規則には、労働時間、休日、賃金、服務規律(職場で守るべきルール)、懲戒(罰則)といった、働く上で非常に重要な事項が定められています。これらのルールを知らないままでいると、自身の権利を知らないまま不利益を被ったり、意図せず会社のルールに違反してしまったりする可能性もあります。
就業規則とは何か
就業規則とは、労働基準法に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場で作成と行政官庁への届出が義務付けられている、職場のルールブックです。労働者の賃金や労働時間といった労働条件に関する事項や、職場の服務規律などが具体的に定められています。
就業規則は、労働条件通知書に記載された個別の労働条件よりも、より網羅的で詳細なルールを定めていることが一般的です。
非正規雇用者への就業規則の適用
原則として、会社の就業規則は、その会社で働く全ての労働者(正社員、契約社員、パート、アルバイトなど)に適用されます。ただし、就業規則の中で、特定の区分(例: 正社員のみ、嘱託社員のみ)にのみ適用される規定が明確に定められている場合は、その規定については適用範囲が限定されます。
例えば、「〇〇手当は正社員にのみ支給する」といった規定があれば、非正規雇用者にはその手当は支給されません。しかし、労働時間や休憩、休日、服務規律、懲戒といった基本的なルールに関する規定は、特段の限定がなければ全ての労働者に適用されると考えられます。
労働契約法第7条では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」と定められています。これは、労働契約の内容は就業規則によって決まる部分があることを示しています。
非正規雇用者も就業規則を確認すべき理由
非正規雇用者の方が就業規則を確認することには、以下のような重要な意味があります。
- 自身の権利を知るため: 有給休暇の取得条件、残業代の計算方法、休憩時間のルール、退職時の手続きなど、労働条件通知書には詳しく書かれていない細かなルールが記載されています。自身の権利を正しく理解するために不可欠です。
- 守るべき義務やルールを知るため: 服務規律やハラスメントに関する規定、情報管理に関するルールなど、職場で働く上で守るべき事項が定められています。これらを把握することで、意図しないトラブルや規則違反を防ぐことができます。
- 不利益な取り扱いを受けていないか確認するため: 就業規則に定められた労働条件が、実際に自身に適用されている条件と異なっていないかを確認できます。特に、賃金計算や労働時間管理などについて、規則通りになっているかチェックする上で重要です。
- 労働条件通知書との関係性を理解するため: 労働条件通知書に記載されていない事項について、就業規則が補完的な役割を果たしている場合があります。また、通知書と就業規則で内容が異なる場合の優先関係なども理解できます(原則として、労働者にとって有利な方が優先されることが多いですが、個別の労働契約や就業規則の内容によります)。
- 懲戒処分について理解するため: どのような行為が懲戒処分の対象となるか、どのような種類(戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇など)があるかが定められています。
就業規則の確認方法
では、どのようにして会社の就業規則を確認すれば良いのでしょうか。
- 会社に請求する: 就業規則は、労働者に周知する義務があります(労働基準法第106条)。労働者からの請求があれば、会社は原則として閲覧させるか、写しを渡す必要があります。「就業規則を見せてほしい」と、まずは会社の担当部署(人事部など)に申し出てみてください。
- 職場の見やすい場所に掲示されているか確認する: 労働基準法では、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けることなどが周知の方法として認められています。ロッカールームや休憩室などに掲示されていないか探してみてください。
- 社内ネットワークで確認する: 社内イントラネットなどでデータとして公開されている場合もあります。
- 入社時に配布されるか確認する: 入社時のオリエンテーションで説明があったり、書面で配布されたりする会社もあります。
もし、請求しても会社が就業規則を見せてくれない場合は、労働基準監督署に相談することができます。
就業規則と労働条件通知書の内容が異なる場合
労働条件通知書は個別の労働契約の内容を明示するもの、就業規則は職場全体の共通ルールを定めるものです。両者の内容が異なる場合、どのように解釈されるのでしょうか。
原則として、
- 就業規則の内容が、労働条件通知書の内容より労働者にとって有利である場合は、就業規則の内容が優先されることが多いです。
- 労働条件通知書の内容が、就業規則の内容より労働者にとって有利である場合は、個別の労働契約である労働条件通知書の内容が優先されることが多いです(ただし、就業規則が労働契約の内容となる要件を満たしている必要があります)。
ただし、この解釈は個別の状況や就業規則、労働条件通知書の具体的な記載内容によって異なる場合があります。不明な点があれば、専門家や相談機関に確認することが重要です。
就業規則を確認する際の注意点
就業規則を確認する際は、以下の点に注意してください。
- 最新版を確認する: 就業規則は変更されることがあります。確認する際は、それが最新版であるかを確認しましょう。
- 自身の雇用区分に関する定めを確認する: パートやアルバイトなどの非正規雇用に関する特別な定めがないか注意して確認してください。
- 重要だと感じる箇所をメモする: 全てを暗記する必要はありません。労働時間、休日、有給休暇、賃金、服務規律、懲戒といった、自身にとって特に関心のある項目や重要だと感じる箇所をメモしておくと良いでしょう。
- 不明な点は質問する: 内容を読んで分からない点があれば、会社の担当者や上司に質問してみましょう。
まとめ:自身の権利とルールを知る第一歩として
非正規雇用者であっても、会社の就業規則は自身の労働条件や職場で守るべきルールに関する重要な情報源です。これを理解することは、自身の権利を守り、安心して働くために不可欠です。
もし会社の就業規則を確認したことがない場合は、まずは会社に請求するなどして内容を把握することをお勧めします。不明な点や疑問に思うことがあれば、会社の担当者に確認するか、必要であれば労働基準監督署などの外部の相談機関に問い合わせてみましょう。自身の働く環境を正しく理解することが、より良い働き方への第一歩となります。