非正規雇用者が知っておくべき、勤務中の体調不良で休む時の権利
勤務中の体調不良、非正規雇用者はどう対応すべきか
誰でも、勤務中に突然体調が悪くなる可能性はあります。特に非正規雇用で働く方の中には、「休んだらシフトに穴を開けてしまう」「給与が減ってしまうのではないか」といった不安から、体調が悪くても無理して働き続けてしまうケースもあるかもしれません。
しかし、体調不良を我慢して働くことは、ご自身の健康を害するだけでなく、業務上のミスにつながったり、場合によっては周囲に体調不良が伝染したりするリスクも伴います。労働者として、また職場で働く一員として、体調不良時に適切に対応するための基本的な知識を持つことは非常に重要です。
この項目では、非正規雇用者が勤務中に体調不良になった際に知っておくべき権利、給与に関する基本的な考え方、そして取るべき対応について解説します。
労働者の健康と安全を守るための基本的な考え方
まず知っておいていただきたいのは、労働契約を結んで働くすべての労働者には、健康で安全に働くための権利があるということです。使用者(会社や雇用主)には、労働者の安全に配慮する義務があります(安全配慮義務)。これは、非正規雇用者であるパートやアルバイト、契約社員の方にも適用されます。
ご自身の体調が優れないにもかかわらず、無理な業務を続けたり、体調不良を申告しづらい雰囲気の中で働くことは、この安全配慮義務の観点からも問題が生じうる状況です。
勤務中の体調不良による早退・欠勤と給与
勤務中に体調が悪化し、早退したり、その後のシフトを休んだりする場合、給与はどのように扱われるのでしょうか。
基本的な考え方としては、「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。これは、労働者が労働を提供しなかった時間については、賃金を支払う必要はない、という原則です。したがって、体調不良で早退したり欠勤したりした時間の賃金は、原則として支払われません。
しかし、これはあくまで一般的な原則です。就業規則や個別の労働契約によって、病気による欠勤の場合に一定期間は給与を保障する制度が定められている場合もあります。まずは、ご自身の会社の就業規則や労働条件通知書を確認することが重要です。
また、体調不良を理由に会社が労働者の同意なく一方的に休業を命じた場合は、「会社都合による休業」とみなされ、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払い義務が発生する可能性があります。しかし、これは労働者側からの体調不良の申告に基づいた早退や欠勤とは異なるケースです。
体調不良による給与控除のルール
体調不良で早退したり欠勤したりした場合、働けなかった時間の賃金が控除されるのは原則として適法ですが、その控除方法にはルールがあります。
労働基準法では、賃金から一方的に控除できるのは、法令に別段の定めがあるもの(社会保険料、税金など)か、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数を代表する者)との書面による協定がある場合のみとされています。
また、労働者のミスなどに対する減給については、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないという制限があります(労働基準法第91条)。体調不良による欠勤はミスとは異なりますが、早退や遅刻、欠勤による賃金控除は、実際に労働しなかった時間分を、合理的な計算方法に基づいて行う必要があります。例えば、分単位での計算や、事前に定められた合理的な計算式を用いるなどが一般的です。罰金のように不当に高額な控除を行うことは違法となります。
体調不良時の会社への報告義務と注意点
体調不良で早退や欠勤が必要になった場合、会社への報告は適切に行う必要があります。無断での早退や欠勤は、会社の秩序を乱す行為とみなされ、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
- 速やかな連絡: 体調不良を感じたら、できるだけ早く直属の上司や責任者に報告しましょう。業務への影響を最小限に抑えるため、早めの連絡が求められます。
- 連絡方法: 会社のルール(電話、メール、チャットなど)に従って連絡します。
- 病状の説明: 具体的な症状を詳しく伝える必要はありませんが、業務遂行が困難であること、早退や欠勤が必要である旨を明確に伝えましょう。
- 診断書の提出: 会社によっては、病状確認のために診断書の提出を求める場合があります。法的に必ず提出しなければならない義務があるとは限りませんが、会社の規定によったり、欠勤が長期に及んだりする場合は、提出を求められることがあります。円滑なコミュニケーションのため、会社の指示に従うことも検討しましょう。
体調不良が業務に起因する場合
もし、体調不良が業務中に発生した事故や、業務による負荷(過重労働、ハラスメントなども含む)に起因する場合は、労働災害(労災)に該当する可能性があります。労災と認定されれば、治療費や休業中の賃金(休業補償給付)などが労災保険から支払われます。業務中の体調不良が続く場合や、業務との関連性が疑われる場合は、労災申請について検討することも重要です。
まず確認し、必要に応じて相談を
体調不良は誰にでも起こりうることです。非正規雇用で働く方も、必要に応じて適切に休みを取り、回復に努める権利があります。
- まずは就業規則を確認しましょう。 体調不良時の連絡方法、欠勤時の給与の扱いなどが記載されています。
- 体調が悪ければ、無理せず上司に報告しましょう。
- 欠勤や早退後の給与明細は確認しましょう。 不当な控除がないかチェックすることが大切です。
もし、体調不良を理由に不当な扱いを受けたと感じたり、給与控除について疑問があったりする場合は、一人で抱え込まずに相談することも考えてみてください。会社の相談窓口、労働組合、あるいは労働基準監督署や弁護士などの専門機関に相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができます。
ご自身の健康と安全を守るためにも、体調不良時には適切な対応を心がけましょう。