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非正規雇用で働く際の制服代や備品代は自己負担?法律上のルールを解説

Tags: 制服代, 備品代, 費用負担, 労働基準法, 非正規雇用

非正規雇用で働く際の制服代・備品代負担に関する疑問

パート・アルバイトなどの非正規雇用で働く際、職場で着用する制服や業務に必要な備品について、その費用を自分で負担するように言われるケースがあるかもしれません。例えば、特定の制服の購入を求められたり、業務で使う消耗品や小さな道具類などを自費で購入するよう指示されたりする場合です。

こうした費用負担について、「これは当たり前なのだろうか?」「会社が負担するべきではないか?」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、労働に関する法律に基づいて、制服代や備品代の費用負担に関するルールをご説明します。

制服代や備品代の費用負担は誰が行うべきか

労働基準法においては、働く上で必要な費用負担について、いくつかの規定があります。特に重要な点として、労働者のために使用されるべきものを労働者が負担する場合のルールが考えられます。

結論から申し上げますと、原則として、業務遂行のために必要となる物品の費用は、使用者(会社)が負担すべきものであると考えられています。これは、企業活動に伴って発生する費用は、その事業を行う主体である使用者が負担するのが自然であるという考え方に基づいています。

労働基準法第89条では、就業規則に記載すべき事項として「作業用品その他労働者に負担させるべき費用に関する事項」を挙げています。これは、仮に労働者に費用負担をさせる場合には、その旨を就業規則に明記する必要があることを示唆しています。しかし、単に就業規則に書けばどのような費用でも労働者に負担させられるというわけではありません。

労働者に費用負担が認められるケースとその限界

就業規則に費用負担の規定がある場合や、労働者と使用者との間で個別の合意がある場合に、労働者が費用の一部または全部を負担することが認められることがあります。

ただし、この場合でも、その負担が労働者に一方的に不利益を与える不合理な内容であってはなりません。費用負担の内容が、就業規則や労働契約の内容として有効であるかについては、以下の点が考慮される可能性があります。

特に、業務に必須の制服や備品でありながら、その費用が労働者の賃金と比較して高額である場合や、退職時に買い取りを強制されるような場合は、労働基準法に反する不当な費用負担とみなされる可能性があります。

過去の裁判例では、業務に必要な制服の購入費用を労働者に負担させることは、その制服が業務以外では通常着用しないものである場合などにおいては、無効であると判断されたケースも存在します。

具体的な対応と確認すべきこと

もし制服代や備品代の自己負担を求められた場合は、以下の点を確認してください。

  1. 労働条件通知書や雇用契約書の確認: 雇用契約を結ぶ際に交付された労働条件通知書や雇用契約書に、制服や備品に関する費用負担の定めが記載されているかを確認しましょう。
  2. 就業規則の確認: 会社に就業規則がある場合、その中で費用負担に関する規定がどのように定められているかを確認してください。就業規則は労働者がいつでも確認できるよう、事業場に備え付けておく義務があります。
  3. 負担内容の確認: どのような物品の費用を、いくら負担する必要があるのか、具体的な内容を会社に確認しましょう。なぜ労働者が負担する必要があるのか、その理由についても説明を求めることができます。
  4. 労働組合や同僚への相談: もし職場で労働組合があれば相談してみるのも良い方法です。また、同じ職場の同僚も同様の疑問や不安を抱えている可能性があります。

問題があると感じた場合の相談先

労働条件通知書や就業規則に記載がないにも関わらず一方的に費用負担を求められたり、その負担額や内容が不合理であると感じたりした場合は、一人で抱え込まずに外部の機関に相談することを検討してください。

まとめ

非正規雇用で働く方が、業務に必要な制服や備品にかかる費用を自己負担するように求められた場合、原則としてその費用は使用者が負担すべきであると考えられます。労働者による費用負担が認められる場合でも、労働条件通知書や就業規則への明記、合理性、労働者の同意など、いくつかの条件を満たす必要があります。

不当な費用負担を求められていると感じた場合は、まずは自身の労働条件を確認し、会社に説明を求めましょう。それでも解決しない場合や、疑問が解消しない場合は、労働基準監督署などの公的機関に相談することが、自身の権利を守るために重要です。

労働に関する知識を正しく理解し、働く上での不安を解消していきましょう。