非正規働く人の権利ガイド

パート・アルバイトのための地震・台風時の出勤と賃金ルール解説

Tags: 労働時間, 賃金, 休業手当, 自然災害, 安全配慮義務, パート, アルバイト

自然災害は予期せず発生するものであり、地震や台風などが起きた際に「会社に行けない」「仕事が休みになったら給料はどうなるのだろうか」といった不安を感じるパート・アルバイトの方もいらっしゃるかと思います。このような災害発生時における労働者の権利や会社のルールについて、基本的な考え方をご説明します。

自然災害時の出勤義務と労働契約の基本的な考え方

労働契約は、労働者が働き、会社が賃金を支払うという約束に基づいています。しかし、地震や台風などの自然災害が発生し、働くことが困難になった場合、この約束をそのまま適用することが難しい状況が生じます。

まず重要なのは、会社の「安全配慮義務」です。会社は、労働者が安全に働けるように環境を整える義務があります。そのため、自然災害によって労働者の安全が確保できない状況では、無理な出勤を指示することは安全配慮義務違反となる可能性があります。

自然災害で出勤できない・休業した場合の賃金

自然災害により会社を休まざるを得なくなった場合の賃金の扱いは、状況によって判断が分かれます。

1. 公共交通機関の停止などにより、出勤が物理的に不可能な場合

地震や台風の影響で電車やバスが運休し、合理的な手段で会社までたどり着けないような状況です。このような場合、多くは労働者自身の責任ではなく、やむを得ない事由による欠勤と見なされます。

労働基準法において、このようなケースで会社に賃金支払いの義務が生じるかというと、原則として、会社の「責めに帰すべき事由」による休業ではないため、会社は賃金を支払う義務を負わないと解されることが多いです。つまり、休業した時間・日について無給となるケースが一般的です。

ただし、会社の就業規則や個別の労働契約、または会社の判断によって、特別に賃金が支払われたり、欠勤扱いとしないといった対応が取られる場合もあります。

2. 災害により会社自体が機能できず、休業となった場合

地震で建物が損壊したり、停電が長期間続いたりして、会社として業務を遂行できないために休業となるケースです。

この場合、労働基準法第26条では「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない」と定めています。これが「休業手当」です。

しかし、自然災害による休業は、会社の意思や責任によるものではなく、不可抗力によるものと見なされることが一般的です。そのため、原則として、自然災害のみが原因で会社が休業した場合、会社に休業手当の支払い義務は生じないと解釈されることが多いです。

ただし、災害発生後の会社の対応に問題があった場合や、予測できたにも関わらず対策を怠った場合など、会社側に何らかの落ち度があると判断される場合は、休業手当の支払い義務が生じる可能性もあります。

危険な状況下での出勤指示

会社が営業していたとしても、地震による建物の損傷が大きい、周辺地域で二次災害のリスクが高い、避難指示が出ているなど、客観的に見て労働者の生命や身体に危険が及ぶ可能性がある状況で、会社が無理な出勤を指示することは、安全配慮義務に違反する可能性があります。

このような状況では、労働者は危険を避けるために出勤を拒否できると考えられます。出勤を拒否したことだけを理由として不利益な扱いを受けることがあってはなりません。

災害時の会社のルールを確認する

自然災害発生時の対応については、会社の就業規則や労働契約書に定められている場合があります。「災害発生時の出勤について」「緊急時の連絡体制」「休業時の賃金の取り扱い」などが記載されていないか、事前に確認しておくことが大切です。

また、災害発生時には、会社の指示や判断が最も重要になります。安全を確保した上で、会社からの連絡を待つ、あるいは会社に状況を確認するなど、冷静に対応することが求められます。

困ったときは相談を

自然災害発生時の労働に関するルールは複雑であり、個別の状況によって判断が難しいケースもあります。会社の対応に疑問がある場合や、不当な扱いを受けていると感じる場合は、一人で悩まずに相談することも検討してください。

まとめ

地震や台風などの自然災害は避けられませんが、災害時における自身の労働に関する基本的なルールを知っておくことは、万が一の事態に備える上で役立ちます。自身の安全を最優先に行動し、会社のルールや指示を確認するとともに、必要に応じて相談機関を利用することを検討してください。労働契約や法律に関する疑問は、正確な情報を得ることで不安の軽減に繋がります。