正社員と違うのはなぜ?非正規雇用と同一労働同一賃金
同一労働同一賃金とは:パート・アルバイトの待遇差について知る
パートやアルバイトとして働く中で、「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜ賞与がないのだろう」「通勤手当の計算方法が違うのはおかしいのでは?」といった疑問を感じたことはありませんでしょうか。正社員と非正規雇用者の間の様々な待遇差は、働く上で大きな不安や不満につながることがあります。
このような待遇差の問題に対し、近年特に重要視されているのが「同一労働同一賃金」という考え方です。これは、同じ会社で働く労働者であれば、雇用形態(正社員、パート、アルバイト、有期契約社員など)に関わらず、仕事内容や貢献度が同じであれば、賃金やその他の待遇も同じであるべきだ、という原則に基づいています。
この記事では、非正規雇用として働く皆様が自身の待遇について正しく理解できるよう、同一労働同一賃金の基本的なルールと、どのような待遇差が「不合理」とされるのかについて解説します。
同一労働同一賃金の目的と基本的な考え方
同一労働同一賃金は、日本の働き方改革の重要な柱の一つとして推進されています。その主な目的は以下の通りです。
- 不合理な待遇差の解消: 雇用形態にかかわらず、職務内容等が同じであれば、基本給や賞与、手当、福利厚生などの待遇面で不合理な差をなくすことを目指します。
- 多様な働き方の選択を可能に: 雇用形態による不合理な待遇差がなくなることで、労働者は自身のライフスタイルや希望に応じて多様な働き方を選びやすくなります。
この考え方は、労働契約法、パートタイム・有期雇用労働法(旧パートタイム労働法と有期雇用労働法を統合・改正)、労働者派遣法といった法律によって定められています。特に、パートタイム・有期雇用労働法では、事業主に対して、正社員(通常の労働者)と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を設けることを禁止しています。
どのような待遇が同一労働同一賃金の対象になるか
同一労働同一賃金のルールは、賃金だけでなく、様々な待遇に適用されます。具体的には、以下のような項目が含まれます。
- 基本給: 職務の内容、成果、能力、経験などを考慮した基本給について、不合理な差があってはなりません。
- 賞与(ボーナス): 会社の業績等への貢献に応じて支給される賞与について、同一の貢献であれば同一の支給が行われる必要があります。ただし、貢献の内容や程度に差がある場合は、その差に応じた支給とすることは可能です。
- 各種手当: 通勤手当、精皆勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当など、様々な手当について、不合理な差は認められません。
- 福利厚生: 食堂利用、休憩室利用、更衣室利用といった設備利用や、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障、病気休職といった法定外休暇についても、同一の利用・付与が必要とされます。
- 教育訓練: 業務に必要なスキルアップのための教育訓練についても、職務内容が同じであれば受けられる機会に差があってはなりません。
「不合理な待遇差」はどのように判断されるか
待遇差が「不合理」にあたるかどうかは、単に雇用形態が違うという理由だけでは判断されません。以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
- 職務の内容: 担当している仕事の内容(業務の内容や責任の程度)が、正社員と比べてどの程度同じか、または違うか。
- 職務の内容及び配置の変更の範囲: 将来の転勤や部署異動など、配置転換や仕事内容の変更の可能性が、正社員と比べてどの程度見込まれるか。
- その他の事情: 上記以外に、待遇の性質や目的(例:皆勤手当は欠勤を減らす目的、賞与は貢献に報いる目的など)に照らして、待遇差を設けることが適切かどうか。
これらの要素を比較して、差があるにもかかわらず、正社員と非正規雇用労働者との間で待遇に差を設けることが、上記1や2の範囲等に照らして適切でないと判断される場合に、「不合理な待遇差」とされます。
例えば、正社員もパートも全く同じレジ業務だけを行い、異動の可能性もない場合、基本給や通勤手当、慶弔休暇などに差を設けることは不合理と判断されやすい傾向があります。一方で、正社員には将来的な管理職への昇進や全国転勤の可能性があるが、パートにはそうした予定が全くない場合、基本給に一定の差が生じることなどは、必ずしも不合理とはされない可能性があります。しかし、どのような待遇差がどこまで許されるかは、個別の状況や待遇の性質によって判断が分かれるため、注意が必要です。
自身の待遇について疑問を感じたら
もし、ご自身の待遇が正社員と比較して不合理だと感じた場合は、以下のステップを検討してみてください。
- 労働条件通知書や就業規則の確認: まずは、ご自身の雇用契約の内容や会社の就業規則を確認し、ご自身の待遇がどのように定められているかを把握しましょう。
- 会社への説明要求: 事業主は、非正規雇用労働者から正社員との待遇差の内容や理由について説明を求められた場合、これに応じる義務があります。疑問点があれば、まずは会社の担当部署に説明を求めてみましょう。説明を聞くことで、待遇差の理由が明らかになる場合もあります。
- 外部機関への相談: 会社の対応に納得がいかない場合や、説明を求めるのが難しい場合は、労働局の「働き方改革推進支援センター」や、弁護士会、社会保険労務士会などの専門機関に相談することも可能です。これらの機関では、同一労働同一賃金に関する相談に応じてくれます。
まとめ
同一労働同一賃金は、すべての働く人が公正な待遇を受けられるようにするための重要な原則です。非正規雇用であるというだけで、不合理な待遇差が設けられることは法律で禁止されています。
もし、ご自身の待遇に疑問や不安がある場合は、まずは労働条件通知書などを確認し、会社に説明を求めてみてください。それでも解決しない場合は、一人で悩まず、労働局などの公的な相談窓口に相談することをおすすめします。自身の権利を知り、適切な行動を取ることが、より良い労働環境につながる第一歩となります。
このサイトでは、非正規雇用で働く皆様の様々な疑問や不安を解消するための情報を今後も提供してまいります。